CVD.JP [Cardiovascular Disease] CVDの日本人のエビデンス集まる

高血圧から心不全への進展をいかに遅らせるか −日本人の心を護る− in 札幌

慢性心不全に対するARBの有用性

三浦

最後に、Stage Cの有症候群に対する治療の実際について討論したいと思います。具体的に、どのような薬剤で治療していますか。

西宮 図6 CHARM 慢性心不全に対するARBの効果

Stage Cでは息切れや疲労感などの症状がみられますので、RA系抑制薬に利尿薬やβ遮断薬などを併用することが推奨されています。

心不全に対するARBの有効性を示すエビデンスとして、最も重要なのはカンデサルタンの有効性をプラセボと比較したCHARM試験です。

この試験はEFなどの違いによって対象者を分けた3つの試験で構成され、これら3 つの試験を統合したCHARM-Overallという解析が行われています(図6)。

その結果、カンデサルタン群において総死亡とイベント発症率の有意なリスク減少がみられています。

また、CHARM-Preserved試験は、LVEFは保持されているにもかかわらず(LVEF>40%)、うっ血性心不全を発症する、まさに拡張期心不全を対象にカンデサルタンの有効性を検討しています。

その結果、カンデサルタンは主要評価項目である心血管死および心不全による入院をプラセボに比して11%抑制し、試験実施医師の報告に基づく入院率および延べ入院回数は、有意に減少していました。

ここで疑問になるのは、腎臓に関してはACE阻害薬とARBの併用が臓器障害の予防に有効であるとの成績が多いのに対し、心不全に関してはACE阻害薬とARB併用の効果に関して成績が一定していないように思います。この点はどのように考えればよいのでしょうか。

三浦

確かなことは不明ですが、臓器障害の発症機構の違いが背景にあると思います。ACE阻害薬とARB併用の効果が期待できる病態として、ACE以外の機序によるアンギオテンシン産生が少ない、ACE阻害薬により増加するキニンが障害抑制に有効である、といったことなどが考えられます。腎障害ではこうした条件が満たされている例が多いのに対して、心不全の場合には必ずしもそうではなく症例間の違いが大きいのではないか。そのためVal-HeFTとCHARM-Addedの結果の違いも生じた、と想像しています。

牧野

急性期には血管拡張薬と利尿薬を中心に、必要があれば循環作動薬を投与します。慢性期においては、基本的にACE阻害薬あるいはARBとβ遮断薬の併用療法を行い、体液に依存する症例には利尿薬を使います。

β遮断薬とRA系抑制薬のどちらを先行するかは、病態によって異なります。すなわち、虚血が原因の場合はβ遮断薬を、高血圧性心肥大が強い拡張期心不全に対してはARBあるいはACE阻害薬を優先させます。

ACE阻害薬とARBは同じRA系抑制薬でも若干作用が異なりますので、どちらが第1選択薬かは非常に難しい問題ですが、副作用を考慮してARBを優先しています。

一方、入退院を繰り返す患者さんには、CHARM-Added試験の成績を考慮してACE阻害薬とARBの併用を行っています。

三浦

併用の場合、用量はどのようにしていますか。

牧野

推奨用量で効果不十分な場合には、単剤を最大用量まで使うのではなく、他剤を併用しています。

山下

逆に、血圧が低い方の治療が難しいですね。利尿薬だけで収縮期血圧が100mmHgまで下がる場合には、利尿薬を少なくしてでもARBを入れるほうがいいといわれていますが、それでも心不全の悪化を抑制できない場合があります。

土田

重症心不全の場合には、もともと原因が高血圧性であっても血圧低値のことがあり、過剰降圧に注意しながら併用療法を行わなければならないことが、心不全治療上大切な点と考えられます。先ほど指摘された、Val-HeFT試験で多剤併用の有効性がみられなかった理由もそこにあるのではないでしょうか。

美田

欧米の試験成績をみると、高用量のARBを使って良い効果を出していますので、本邦でもいかに高用量のARBを使うかがテーマになるのではないでしょうか。

勝賀瀬

本日のテーマにある心不全を視野においた高血圧治療では、第一に充分な降圧が必須だと思います。臓器保護にはARB、厳格な降圧にはCa拮抗薬というのが一般的な考え方ですが、高血圧による心肥大や心拡大から拡張期心不全になる患者さんが増えている現状を考慮するとARBは重要であり、カンデサルタンを含む最近のARBはきちんと降圧ができますので、これらのARBを高用量使用することも大切だと思います。

三浦

降圧薬併用についてのご意見を要約させていただくと、高血圧症では目標血圧まで降圧させることを基本としてRA系抑制薬を含む組み合わせを検討する、血圧が低い心不全の場合には利尿薬の用量を工夫しつつACE阻害薬あるいはARBを導入する、といったことになろうかと思います。

筒井

本日は「高血圧から心不全への進展を如何に防ぐか」というテーマで皆さんから大変貴重なご意見をいただきました。特に心腎連関の重要性が認識されている現在、RA系抑制薬、特にARBの有用性はますます大きくなると思われます。

本日はありがとうございました。